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ひとしきり声を出して笑い合った後、殆んど沈んだ太陽を見ながら颯恵が髪をかきあげて呟いた。
「ほんと、命って不思議よね」
遠くの光を見つめるその目は寂しさを感じさせた。
僕は僕の体に入っている梨恵と顔を見合わせ、心に残る罪悪感を打ち消そうとした。
僕たちは命を棄てた。
嫌なことがない人生なんてない。
でも、そこから逃げずに立ち向かってみればどうってことない事もある。
自然とため息が出る。
火事で焼けて黒く焦げた階段を下りながら、目の前で揺れる金髪を見つめた。
この人は生きている・・・・・・。
ビルを出ると夜の闇に銀色のバイクが光っていた。
颯恵は手慣れた動作でヘルメットをかぶり、僕と梨恵を交互に見ながら言った。
「なにか困った事があれば連絡してね。力になるから。あと梨恵・・・・・・いや、中身は優太くんか。塾、サボらないでよ」
――僕たちはバイクの轟音と共に走り去る颯恵が見えなくなるまで手を振っていた。
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