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颯恵が居なくなり、僕たちはどこへ向かうでもなくゆっくり歩き出した。
空と影が混ざり合い、不思議に青い光が街を包んでいた。
冷えたアスファルトを踏みながら梨恵が口を開いた。
「ねぇ・・・・・・優太は、どうして死のうと思ったの?」
僕は足を止めた。
顔にかかる髪を優しく撫でて梨恵を見る。
「どうしてだろう・・・・・・。あの時の僕は単に周りに馴染めない自分が惨めで、可哀想に思えて・・・・・・。自分を正当化しようとして周りを見下してたんだ。それで、些細なきっかけで周りから見放されたとき、僕は死のうと思った」
梨恵は僕より数歩前で止まり、振り向いた。
その顔に、『僕』の顔に馬鹿にするような色はなかった。
僕は梨恵を見つめて言った。
「でも、今は違う気がする。そんなことで死を選んだんじゃない気がするんだ」
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