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梨恵はそう、とだけ呟いて俯いた。
僕は街灯に照らされた『僕』のくせのある髪を見ながら訊ねた。
「梨恵は・・・・・・どうして?」
梨恵は顔を上げてくせ毛をかき混ぜるようにしてくしゃくしゃにした。
「聞きたい?」
『僕』とは思えないほどの艶やかな微笑みに思わず気圧されながら頷く。
梨恵がゆっくりと口を開く。
「・・・・・・お母さんが自殺しようとしたの」
僕は予想外の言葉に目を見張り、思わず聞き返した。
「自殺!?お母さんが?」
梨恵は肩をすくめて微かに口の端を持ち上げた。
「しようとしただけよ。死んでないわ」
僕は開いたままの口をなんとか閉め、梨恵の悲しそうな目を見つめた。
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