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梨恵は目を細めて頭をかきながら言った。
「実はウチのお父さん、ずいぶん前に自殺したの。きっとお母さんはその後を追おうとしたんじゃないかな」
梨恵はそこまで言って目を手でこすった。
その睫毛に涙がついているのを僕は見逃さなかった。
梨恵は、平気なフリをしているけど本当は辛くて、悲しくて、寂しいはずだ。
僕はかける言葉が見つからず、ただ梨恵の悲しい笑顔を見ることしか出来なかった。
「それで、私は、私は・・・・・・。お母さんはきっとまた自殺しようとするから。だから私はそれより先に死のうと思った。これ以上家族が死ぬのを見たくなかった」
涙がいつの間にか梨恵の頬に光っていた。
梨恵の苦しみは分かる。
辛いのも、悲しいのも分かる。
でも、僕には梨恵の言っていることが死に逃げるための言い訳にしか聞こえなかった。
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