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その後はお互い何も喋らずただ俯いて歩いた。
梨恵の死の理由を僕は頭の中で反芻して噛み締めていた。
梨恵も僕もきっといろんな事から逃げて、逃げて死にたどり着いたんだと思う。
僕たち生き物は、死から逃げるべきなのに。
自ら死を選ぶ権利なんて誰にもないのに。
不意に、誰かの声が響く。
梨恵だ。
「じゃあ、私はこれで」
ふと顔を上げると、僕の家があった。
「なんで僕の家を・・・・・・」
「場所くらい知ってるよ。クラスメートでしょう。一度優太が風邪引いて学校休んだとき、プリント届けに来たんだから」
梨恵は得意気に鼻をならしドアに手をかけた。
僕は何か大切な事を忘れているような気がして首をかしげながら梨恵の背中を見つめた。
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