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低く、唸るような声だった。
地を這うようなその力強い声が頭に響く。
『――後悔しないか』
酷痛の中で僕が聞き取れたのはその一言だけだった。
やがて頭痛が治まり、僕はまだ痛みの余韻が残る頭を振って頬を叩いた。
死ぬ前に幻聴が聞こえるなんて、面白いじゃないか。
後悔しないか、そう問われれば僕ははっきりとイエスと答える。
後悔なんて、しない。
僕は目を瞑りゆっくりとした動作で両腕を広げてゆるやかな風を全身で受け止めた。
そして、息を短く吐いて乾いた地面に向かって体を投げた。
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