さくら さくら

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そいつは大きく息を吸った。 空はもうオレンジ色に染まっていた。 オレンジの空が 春の風が、 流れる雲が、 揺らめく桜が こいつの歌を待っていたかのように 全てが吸い込まれるように そいつの歌声は全てを受け入れるように 私の耳へと流れ込んだ。 これが歌?! 私はただ立ち尽くしてしまった。 歌がうまいとかそんなレベルじゃなかった。 「これが、歌」 「うま……うますぎる」 そいつはおもいっきりにっこり笑った。 「だから下手くそな歌は歌うなよ。 近所迷惑だから」 そいつは私に手を振って後を向いた。 行っちゃう!! 待って!!  
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