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「それで……」
智治の一言はその場を鎮めるほどに静かにそして悠然と広がっていく。
「――お前はこれからどうするんだ?
水城家に戻るのか? それとも……」
「確かにそれも考えたのだけれど。僕は特殊資料整理室に転属することにしたよ。家を継ぐ者は他にもいるからね」
幸成は笑顔――何も思い悩んでないような――で去って行った。
「……それがお前の進む道か」
微かな呟きは誰に聞かれる事もなく霧散した。
それから少し時が過ぎたのだが、智樹と由香里は無言でまだ智治の部屋にいた。
「……今日は色々な事があった。もう部屋に帰りなさい」
「そうだな…」 「分かりました…」
二人が出て行った後智治は何かが起こるような胸騒ぎを感じた。
(何も起こらないといいのだが……)
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