思ってもみなかったよ

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夕暮れのオレンジ色の教室にうつ伏せる少女が一人。 所々制服が敗れ、体の目立たない場所ばかりに打撲や切り傷の後が見え隠れしていた。 『うっ…』 うめき声と共にうっすらと目をあけた少女は痛む体を引きずりながら教卓に寄りかかった。 体を動かす度に、集団による理不尽な暴行の跡が痛み、彼女を苦しめた。 ―ガラガラッ― 引き戸独特の音と一緒に一人の少年が夕暮れ色に加わった。 『…っ!?…大丈夫? しっかりして…何があったの??』 少女の知り合いと思われる少年は彼女に気が付いて慌てて駆け寄った。 しかし、少女はそれを煩わしげにはねのけると心配して眉を潜めている少年を睨みつけた。 『良く言うわよ…アンタがこの悪戯の首謀者でしょうが!!』 『そっそんな…どうしたの? なんの事?? どうしてそんな事…言うの?』 『しらばっくれないで!! どう言うつもりなのよ…その腕の傷…!』 そう問われた彼の腕には傷を治療した跡とおぼしき包帯が巻かれていた。 『……フフッ…どう言う事って… ……さぁ?』 段々と優しい友人から悪魔のように歪んだ笑顔になる彼を少女は憎々しげに見つめた。 『アンタ…その腕でみんなの事騙したのね??』 『まさか、思ってもみなかったよ… こーんなミミズ張れみたいなリスカの跡に騙されるなんて…本当に…』 “思ってもみなかった…”っとニコニコ笑う少年。 『ああ…誰かに助けて貰えるなんて思わない事だよ? あの馬鹿共は悲劇の少年を助けるヒーローに、完璧に浸ってるからね…』 そう言葉を続けられて、少女は激しく憎悪した。 高校生活を三年も共に過ごしてきた仲間達を、一体なんだと思っているのかと体がワナめいた。 『この…腹黒狸が…』 『クククッ… お褒めの言葉…ありがとう…』 愉快そうに笑うと少年はカッターを取り出し、包帯がある腕を思いっきり斬りつけた。 『………!!? やぁ…止めてぇ!!!』
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