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「そ~っと、そ~っと…」
古びた本を均一間隔に並べる。
倒れないように、ゆっくりと…
一瞬の油断が命取りになりかねない。
「ふぅ…」
汗を拭う。
僕は今、挑戦している。
この高見を越えたら僕にも自信がつくかもしれない。
「何をやっているんですか?」
不意に後ろからか声。
「わぁぁっ!」
僕は驚いて大声を上げた。
その『ハズミ』で積み立てたモノを崩してしまう。
「あ!」
一度崩れるともう止まらない、音を立てて次々と本を崩していく!
パタタタタタタタタタタタ!
「あぁぁぁぁぁぁぁ!」
タタタタタタタタタン!
とうとう最後まで崩れてしまった…
これまでの僕の努力は一体…
「………」
虚脱感だ、やってしまった…
その思いと後悔が…
「何をやってるんですか」
「見て分かりませんか?」
「はぁ、私には分かりかねます」
「…ドミノですよ」
せっかく後少しで100冊並んだのに!
「…ドミノ…とは一体?」
え?
ドミノを知らないのか?
誰でも一度は必ずやってしまう一人遊びの代名詞ともいえるモノだ。
「ドミノ倒し、知らないんですか?
こう…本とかビデオテープとかを並べていって最後に連鎖的に全部倒れるようにする遊びですよ?」
ホントに知らないのか、男は興味なさげに答える。
「はぁ、すみませんが存じ上げませんね。
仮にやったとしても淋しく見えますが…」
……………この話題は止めよう。
「第一僕も好きでやってるんじゃありませんよ。
暇なんです、僕ら二人以外誰も居ないし、何が『利用者が多い』ですか。
やっぱり人っ子一人、それどころか鼠一匹いやしないじゃないですか!」
男はそれを聞いたら「ふっ」と笑いこう言った。
「何を言っているんですか『お客様』。
今もしっかりと『お客様』はいらっしゃいますよ?」
と僕に向かって指を指す。
「だから…僕は好きで此処にいるんじゃありませんよ。」
誰かさんが帰り道を教えてくれないし、あったハズの扉も無い。
八方塞がりなのだ。
「あなたではありませんよ。」
ん?
よく見れば微かに指が僕からズレてるような…
後ろ?
誰も居なかったのに?
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