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途中で俺は方向が違う佳乃たちと分かれて一人で学校へ向かった。
しばらく一人で歩いていると、ある人物を見つけた。
(……ん?あれはもしかして…………間違いねぇ!)
俺はそいつに駆け寄って声をかけた。
「よぅ!侑斗」
侑斗は振り向いて俺だと確認すると口を開いた。
「ああ 康平か おはよう」
まるっきし感情のこもってない棒読みだった。
「なんだその棒読み……つめてぇなぁ……」
「冗談だよ♪…………多分」
「『多分』って!?相変わらず親しい奴にはきついなおい」
「いや、ここまで遠慮なしなのは康平ぐらいしかいないから安心して」
こいつは鍵島 侑斗(カギシマ ユウト)
昔からの幼なじみで親友だ。
普段は「僕」とか言ったり、丁寧な話し方をするが、俺にはかなりキツい毒舌を吐く。
その人柄からは想像できないが、実は勉強はあまり得意ではなく、かわりにずば抜けた運動能力を持っている。
おまけに人に優しいイケメンときたもんだから結構モテる。
だけどある事情があって、あまり他人とは親しくなろうとはしない。
「いやいや、なにひとつ安心できる要素はないからな!」
「それにしても今日からまた楽しくなるね!」
「なんでだ?」
「フッ………それは康平と一緒に坂上に行けるからだよ」
「そう言ってくれるのはうれしいけど、最初の含み笑いがかなり気になるな……」
「まぁ、康平にとっては大変だろうけどね」
「うわ。やっぱ中学の時と変わらない学校生活を送る羽目になるんだな………」
中学の頃、俺は毎日のように侑斗にいじられ続けた。
へこたれない俺も悪いが、飽きずにいじり続ける侑斗の方が問題だ。
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