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「おい!静かにしろー!」
担任教師はそう言ってから軽く自己紹介とあいさつをし、続いて生徒の自己紹介に移った。
特に代わり映えのしない普通の自己紹介が続く中、侑斗のだけは笑えた。
同級生しかいない自己紹介で、知ることができた個人情報は年齢だけ。そんなの言わなくてもだいたいわかるってのに、さすがは侑斗だ。
面白かったので侑斗への嫌みで俺も年齢を言ってやった。
その時の侑斗の目は………こ、こわかったけど………ま、まぁ、普段の仕返しって事で。
周助の方は人受けの良さそうな優等生自己紹介だった。
その後の休み時間で俺に侑斗の鉄槌が落ちたのは言うまでもない。
その日は教科書配布などで学校は終わり、久しぶりの三人組で、「最後」以外は楽しく過ごして家に帰った。
「ただいまー!」
「お兄ちゃんおかえりなさぁい」
こうしてちゃんと出迎えてくれるのも佳乃だけだ。
本当に良い子に育ってくれて俺は嬉しい。
「ただいま佳乃!腹減ったろ?すぐに晩飯作ってやるからな!」
「佳乃、お手伝いするぅ!」
あぁ、なんという兄弟愛だ。
だが、幼い佳乃にはまだ台所は危険だ。ここは心を鬼にしてでも佳乃を守るのが兄のつとめ!
「ありがとう、佳乃。でもな、最近台所にお化けが出るんだ」
いくら何でもこの嘘は無理があったか?
「えぇ!おばけぇ!?」
うん!さすがは俺の妹だ!
「うん!だからな、今は台所は危ないから兄ちゃんが良いって言うまでは近づいちゃだめだぞ?」
「うん。わかったぁ!」
佳乃は最高の笑顔を俺に向けてくれている。
なんだか逆に嘘をついてしまった罪悪感を感じてしまうが、これも佳乃のためだ!
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