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「そしたら、居間で待ってるんだぞ?」
「うん。佳乃、いい子でまってるねぇ!」
うん。佳乃はなんにもしなくても十分良い子だぞ!
すると太一が不機嫌そうな顔をしてこちらにきた。
「コウ兄~、はやく晩ご飯作ってよ~」
「だまれ小僧。佳乃を見習え、佳乃を。台所にはお化けが居るんだぞ!」
俺は太一を放って夕食に取りかかった。
「………俺なんでいきなり怒られてんの?」
時刻は午後11時を越えようとしていた時、玄関から扉の開く音が聞こえた。
「ただいま~」
スーツ姿の母さんが帰ってきた。
「お帰り、母さん。今、晩飯温めるから」
「うん、ありがと」
母さんは自室に入り、部屋着に着替えて出てきた。
「はぁ~、疲れたぁ……」
母さんはダラッと椅子にもたれかかり、今にも眠りそうだ。
毎日この調子で、こっちとしては心配な限りだ。
俺はテーブルに温めた夕食を並べて、母さんの向かいの椅子に座った。
そして、前から思っていたことを切り出した。
「母さん、やっぱり俺も働くよ」
「ダーメ。あんたはちゃんと学校行って、勉強して、良い大学行きなさい」
母さんはためらうことなく答えた。
「んなこと言ってもこのままじゃ母さん倒れそうだぞ!第一大学に行く金なんてうちには無いだろ」
「じゃあ、特待生になって授業料とか免除してもらえばいいでしょ?」
それでも、母さんの口調は穏やかなものだった。
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