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「大学とか高校行ってる暇があったら、働いて佳乃や太一の進学のために稼いだ方がよっぽどいいだろ!?」
俺は特に慌てない母さんの態度に少しムキになっていた。
母さんは一度ため息をつくと、再び口を開いた。
「あんたはね、別に親代わりになる必要はないの。子供のために自分を犠牲にするのは、兄じゃなくてあたしみたいな代わりじゃない親の役目なの。だから、あんたは黙ってあたしに養われておけばいいのよ。まぁ、家事はお願いしちゃうけどね」
「だけど……」
まだあきらめがつかなかったが、次の言葉がトドメだった。
「それにあんた、サッカーやりたいんでしょ?」
「あっ……………うん」
それを言われたら終わりだ。
俺にはサッカーは唯一無二の、命みたいなものだった。
「あんた才能あるんだから、上手くいって、プロになってくれでもしたらそれこそ最高の親孝行よ。だから、習いに行かせることは出来ないけど、学校の部活ぐらい入りなさい!」
俺には自分を犠牲にしてまで言ってくれた母さんの言葉をむげには出来なかった。
母さんの苦労に応えるにはそれしかない。
それなら、今は母さんの言葉に甘えよう…とそう思った。
「わかった。ちゃんと学校行って、ちゃんと勉強して、ちゃんとサッカーするよ!」
「うん。えらいえらい!」
そう言った急に俺の頭をなでてきた。
「うわっ!やめろって」
「別に恥ずかしがらなくても良いじゃない」
「もういい!寝る!……風邪引くなよ」
そう言い残して俺は自分の部屋に戻った。
「…………本当に……ありがとうね。康平」
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