北極星

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 “決して死ぬことができない”。 4回目の飛び降りの後、また変わり映えのしない日常へ戻ってくると、ぼんやりとした頭でそう悟った。 それからは、流されるままに生きていこうと決めた。 彼女が病院に搬送されることはなくなった。  だが、リストカットだけは続いていた。 痛みと共に流れ出る赤い血を見つめる。 何も感じない自分が、唯一、“生きている”実感を得られる行為。 それに依存しない訳がなかった。 彼女は日課のように、病院へ運ばれない程度に体を刻んだ。  同級生の反応は様々だった。 両親と同じように無関心な者、汚いものを見る目で遠くから様子を窺っている者、憐れみから声を掛けてくる者・・・。 教師達はやたらと構ってくる一方で、陰で囁き合っていた。
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