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「――っていうかさ、ここで議論を交わしたところで、オーナーがOK出さなきゃ進めないわけじゃない!? ……何か馬鹿らしくなってきた」
ホワイトボードにバン!! と手を突き、水森が天を仰いで呟くと、周りの面々も、うんうんと頷いて賛同する。
「ところで、昼までには戻るはずのオーナーは、今どこで何してるのかなぁ~?」
「あの人の事だから、サボってるわけじゃなくて、面接が押してるんじゃないですか?」
やんわりとした須賀の口調に、すかさず水森が噛みつく。
「あ、そうか。今日は不甲斐ない部下の尻拭いの為に面接に行ったんだっけ?」
「また……どうして水森さんはいつも、そうやって僕を邪険にするんですか? 採用していた美容師の子がダメになっちゃったんだからしょうがないでしょう?
だいたい、ダメにしたのはオーナーなんだし、それくらいはご自分で動いてもらって当然ですよ」
そんな二人のやりとりを見守っていたスタッフの一人が、恐る恐る口を開いた。
「チーフ……さっき印刷会社から連絡があって、版下早くあげてくれないと困るって。これ以上遅れると、納期に間に合わないって言ってました」
「……知ってる」
水森はその言葉を吐くと、スケジュールの書かれた書類を取り出し、おもむろに×印を付け出した。
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