君の名前はサブロー

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「あなた何者? 変な事したら大声出して警察呼ぶわよ?」 「……裕太(ゆうた)。腹減って、も……ムリ。食べ物ちょうだぃ」  掠れた声で呟きながらその場にへたり込んでしまった男の子は、年の頃17、8歳といったところだろうか。  身なりや表情から、とても嘘をついているようには思えない。 「この飽食の日本で餓死寸前ってありえないわよ?」 「……」    その時のあたしは、相当酔っぱらっていたんだろう。  それとも、自分からフったはずなのに、恋人がいなくなった寂しさを感じていたんだろうか?  まるで犬や猫を拾うように、なんの躊躇いもなく、その少年を部屋に招き入れた。 「おいで。ミルクでもあげるわ」  座り込んでしまった少年の腕を担ぎ無理矢理立たせ、さきほどとは別人のように軽やかにオートロックを解除して部屋に向かった。
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