君の名前はサブロー

7/15
前へ
/82ページ
次へ
「待って……」  ゆっくりだけど確実に、少年はのっそり起きあがり、ふらつく足を必死に動かして玄関の前でピタリと止まった。 「おじゃまします」  小さな声で呟くと、扉を支えるあたしに軽く会釈して部屋に入った。  ――驚いた。あの状況で挨拶ができるなんて…… 「右の扉がバスルームだから、先にお風呂に入ってきてくれる? 作ってる間暇でしょうし、身綺麗な方が食事もはかどるでしょう?   あ、そうだ。これ舐めてればちょっとはマシかしら?」  そう言って、ポケットに入っていた飴をポイッと放り投げると、少年は満面の笑みで受け取り「ありがとう」と言った。    不覚にもあたしは、その笑顔にとっても、とっても癒されてしまったんだ。
/82ページ

最初のコメントを投稿しよう!

160人が本棚に入れています
本棚に追加