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「待って……」
ゆっくりだけど確実に、少年はのっそり起きあがり、ふらつく足を必死に動かして玄関の前でピタリと止まった。
「おじゃまします」
小さな声で呟くと、扉を支えるあたしに軽く会釈して部屋に入った。
――驚いた。あの状況で挨拶ができるなんて……
「右の扉がバスルームだから、先にお風呂に入ってきてくれる? 作ってる間暇でしょうし、身綺麗な方が食事もはかどるでしょう?
あ、そうだ。これ舐めてればちょっとはマシかしら?」
そう言って、ポケットに入っていた飴をポイッと放り投げると、少年は満面の笑みで受け取り「ありがとう」と言った。
不覚にもあたしは、その笑顔にとっても、とっても癒されてしまったんだ。
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