ささやかなる幸せの言葉

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オシャレなグラスに注がれたビールを龍平先生が飲み干した 『好きですか?ビール』 『大好きだよ。ワインとかシャンパンってのはそんなに好きじゃない』 『私は日本酒が好きですよ。とくに冷酒が』 『じゃあ和食がよかったな』 『ここでも十分です』 『のばら、俺はもともと医者だったんだ、外科医目指してた』 『意外ですね…』 『インターンの頃、癌患者やいろんな人の死をみてきたが、少しも慣れなくて逃げ出したんだ』 この人にも恐ろしいものはあるんだ… 『無性に文字を書きたくなった、自分の気持ちを分にして毎日毎日ノートを文字でうめつくした…言い訳だ。逃げ出した自分の言い訳ばかり書いていた いろんな場所に旅行して、自分はどうするか、何をしたらいいか考えてたんだ 昔の詩人の本を読んでは涙ぐんだ…遠い昔の人なのにまるで今の俺に話し掛けてくるみたいだった 東京にもどり、俺は君の絵を見た。そしてあの雪の中の青い花を思い出したんだ。俺は旅行先で書き溜めた物をある作家の先生に見てもらった 才能があると言われ、詩はすぐに雑誌に載った そして今の俺がいる』 『先生…経験と苦悩と感性と才能があなたを作り上げたんですね』 『君も未知数だ、いろんな経験もしたらいい』 『いろんな経験ね(笑)』 『俺の顔みたら濡れてきた?』 『まさか。今日はごはん食べに来てるんですよ。そこまで性に貪欲じゃないわ』 『俺はまたやりたくなったぞ(笑)』 『ダメです。それに先生は今日とても顔色が悪い…』 本当にそうだった…顔色が悪くて、ほんの少しだけど痩せたような気がした
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