1160人が本棚に入れています
本棚に追加
/65ページ
オシャレなグラスに注がれたビールを龍平先生が飲み干した
『好きですか?ビール』
『大好きだよ。ワインとかシャンパンってのはそんなに好きじゃない』
『私は日本酒が好きですよ。とくに冷酒が』
『じゃあ和食がよかったな』
『ここでも十分です』
『のばら、俺はもともと医者だったんだ、外科医目指してた』
『意外ですね…』
『インターンの頃、癌患者やいろんな人の死をみてきたが、少しも慣れなくて逃げ出したんだ』
この人にも恐ろしいものはあるんだ…
『無性に文字を書きたくなった、自分の気持ちを分にして毎日毎日ノートを文字でうめつくした…言い訳だ。逃げ出した自分の言い訳ばかり書いていた
いろんな場所に旅行して、自分はどうするか、何をしたらいいか考えてたんだ
昔の詩人の本を読んでは涙ぐんだ…遠い昔の人なのにまるで今の俺に話し掛けてくるみたいだった
東京にもどり、俺は君の絵を見た。そしてあの雪の中の青い花を思い出したんだ。俺は旅行先で書き溜めた物をある作家の先生に見てもらった
才能があると言われ、詩はすぐに雑誌に載った
そして今の俺がいる』
『先生…経験と苦悩と感性と才能があなたを作り上げたんですね』
『君も未知数だ、いろんな経験もしたらいい』
『いろんな経験ね(笑)』
『俺の顔みたら濡れてきた?』
『まさか。今日はごはん食べに来てるんですよ。そこまで性に貪欲じゃないわ』
『俺はまたやりたくなったぞ(笑)』
『ダメです。それに先生は今日とても顔色が悪い…』
本当にそうだった…顔色が悪くて、ほんの少しだけど痩せたような気がした
最初のコメントを投稿しよう!