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私はある作品を仕上げた
官能的な人魚の絵だ…
岩に座りひたすら誰かを見つめている。でも下半身が人ではない彼女を相手はどうにもできない
抱かれたい!
抱きたいのに抱けない
官能的で哀しい作品になった
石橋先生はこの絵を見て、しばらく黙っていた
私はいろんな意味でこの絵を描いた
龍平先生を想う彼女の事…龍平先生が初めて私に漏らした本音…
そして石橋先生が、抱きたいけどお前は抱かないと言ったあの言葉
そこに全てがつまっていた
『かすかにうつってる、男の影が印象的だな』と先生はつぶやいた…
『お前にこんな絵が描けるとは…正直驚いてるよ』と先生は私を抱きしめた
『今から画廊に行こう。先にこの絵を見せるんだ』
私は車に乗せられ銀座の画廊に連れて行かれた
オーナーは女性だった
『この作品…のばらさんが?』
『あの画集出してから、この子もいろんな経験したんだ…個展はこんな感じだ』
『来年の夏くらいにと私はおもって予定入れてるんだけど、ちょうどいいわね』とオーナーは目を輝かして言った
『よろしくお願いします』
いよいよ話は本格的になってきた
私は先生に出版社に寄ってもらい、個展の話しを田中さんにしてもらった
『すごいじゃないですか!うちの会社あげて応援させてもらいます』とはりきっていた
『石橋先生の本もベストセラーでおめでた続きです』先生の作品もいずれ、賞をとるはずだ…
50にして有名な賞は総なめしている
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