静寂な時

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11月、私の個展が開かれた 3日間の短いものだったが沢山の人がきてくれた でも龍平先生は顔を出してくれなかった 全作品が高額で売れた オーナーは教会の絵を買ってくれた イラストレーターから私は画家になった 上を目指したいという気持ちもまたでてきた 石橋先生に背中を押してもらってよかったと思った 12月、ヒョウは日本でコンサートを行う事になった。サントリーホールらしい あんな大きな場所でなんて…私は彼の音楽家としての偉大さを知った 私は龍平先生が心配だった。病院で会ってから顔を見ていない 私は思い切って田中さんに連絡して龍平先生の家を教えてもらった 高層マンションの1番上に先生の部屋はあった 入口で先生の部屋の番号を押す 『のばらです、先生…お邪魔じゃなければ入れてください』 ドアが開いた 私はエレベーターで先生の部屋に向かった 先生はすぐに私を部屋に入れてくれた 『身体大丈夫なのか?』 『はい。個展…来てくれなかったですね(笑)』 『ごめん、あんな事あったから俺顔だすとダメだと思って』 私は目を疑った…先生の部屋にあの人魚の絵が飾られてあった 1番高額で売れたから、石橋先生だと思っていた 『石橋先生に前もって言ってあったんだ。オーナーに持ってきてもらった』 『先生、もうあの事件の事は忘れてください。お願いします』 先生は私を抱きしめると『のばら、結婚してくれないか…俺だけの…のばらでいてほしい』 搾り出すような声…こんな先生は初めてだ
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