桜の木の下で

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私はまた一心に絵を描き始めた 欲張りになりそうな気持ちを抑えて色をいれる 教会のマリア像がどうしても描きたかった マリアに白い百合と白い薔薇…微妙な違いの白を使って仕上げたい ホントに難しい… ふとあの絵を思い出した 白い雪の中に咲く小さな青い花… あの時も白に苦労した あの白には冷たさと厳しさを表現したかった でも今回の白には聖母マリアの美しさ、優しさ、清らかさ、慰めを求めたかった… 私は一気に手が止まり、スランプに落ちてしまった… よくある事だけど、あの教会で見た白が欲しかった 私は桜のところにいってみた 季節は初夏…葉桜の時期だった 携帯が鳴った 龍平先生からだ 『夜あいてる?食事行こう』 『食事だけですよ(笑)』 『なんだ(笑)』 『お腹空いてるからたくさん食べさせてください』 『なんか行き詰まってる感じだな。とにかく食べよう』 先生が指示した店は高級焼肉屋だった 『ここすごく有名ですよね。予約もとれないし』 『俺最近テレビでてるだろ?そのツテで予約してもらった』 『私なんかと食事して問題ないんですか(笑)』 『写真週刊誌に撮られたらお互い名前が売れる』 『どうせなら若い子とか女優さんときたらいいのに』 『まあまあ、どんどん食べなさい(笑)日本の焼肉なんて久しぶりだろ?』 『かなり久しぶりです(笑)あ、美味しい!』 私は馬鹿みたいに飲んで食べた 『ね、先生。私ね、この世界入ってずっとピル飲んでるんです。17歳からかな…』 『…男に抱かれるの覚悟で?』 『そうです。』 先生はビールをおかわりした
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