現実と幻想の境目

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  紙を投げ入れられた方向を見てみると、やはり青目のなんちゃって日本人転校生がいた。 ジッと見つめてみるが、何も無かった様に教卓の方を向き、こちらに見向きもしない。 不思議に思ったが、取り敢えず中身が気になった俺は紙切れを広げてみる。 【貴方が浜月宇瑠さんですか?『はい』か『いいえ』で答えて下さい。】 そこにはパソコンを打ってそのままプリントアウトされたかの如き達筆な字が、寸分の狂いもなく綺麗に並べられていた。 方法は違えど、久し振りに他人とまともにコンタクトした喜びと、一切も感情の余地の無い文章に落胆した心とが混ざり会い、微妙な心境になった俺だったが、折角なので送られて来た紙切れの文章の下に返事を書いてみる。 『はい。なんで俺の名前を知ってるんですか?』 全てを相手が決めたままに返事をするのは……なんか悔しいので、少々捻くれた返答を書き込み、誰も気付かれない様にそっとそれを隣りの席に返した。  
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