限られた自由 Liberty

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――ジリリリリリ!! と頭のすぐ上で凄まじい音を出され、俺は今日も最悪の目覚めで朝を迎えた。 「さいっあくだ……」 昨夜寝る前にやったレポートのせいで夢にまでその内容が反映しちまった。 小難しい世界情勢なんかに時間を使ったせいで激しく頭がいたい……。 とりあえず下に降りて水でも飲もう。 そう考えて俺はまだだるい足を引きずって階段を降り、キッチンの冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して一口飲む。 冷たい喉ごしに目が覚めると同時に盛大な欠伸が出た。 俺、黒神御景の家は基本的に放任主義の共働きだ。 両親はこの地方都市の企業のやり手とそのパートナーで、親父の方はたまにしか家に帰って来ない。 お袋の方は何とか毎日帰って来てはいるけど、それでも朝早くに俺より先に行っちまうから会えるのは夜だけ。 まぁいつものことだから気にしてはいないが……。 ふとテーブルを見ると律義にも朝食の用意だけはされてあった。 「まったく。忙しいくせに……。ありがとさん」 苦笑混じり礼を言っていつものように飯をパクつき、歯を磨き、髪を整え学校の制服を着る。 今は6月だから衣替えにはまだ早い。 じめじめする梅雨の時期だが我慢して、俺は通学用のカバンを持って珍しい梅雨晴れの朝へと歩きだした。 空には所々千切れたような雲が浮かび、そして街の外縁部から伸びる巨大な幾本もの鋼鉄のアーチが、街の中央に聳えるこれまた巨大な『ブレインタワー』と呼ばれる塔に接続されている。 そう……これがあるからこそ、俺達はこの街で生きて行ける。 これがその昔アメリカが開発した対天使兵器『A.I.G.I.S』だった。 対天使兵器『A.I.G.I.S』。 初めての天使襲撃の折り、偶然にも破壊された天使の死骸の一部からデータを抽出し、奴等が人間や他の生物とは異なり、肉体はこの世界の元素で出来てはいるものの、心臓やその他の臓器は全くなく、脳と思わしき所でさえ猿以下の容量しかない事が分かった。 そして、奴等を動かしているのは体内に内包された莫大で純粋なエネルギーその物だという事も証明された。
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