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生物を超越した究極の殺戮兵器――天使。
だが色々と研究を重ねた結果、奴等はこの装置が出す特殊な電磁波によって格段に性能が落ち、行動を抑制出来る事が分かった。
それですぐにでもそれを奴等の殲滅兵器として開発しようとしたらしいが、あらゆる面でことごとく失敗。
最終的に奴等の行動を抑制するには街一つを覆い尽くす程の規模が必要だと言う事に行き着いた。
そしてそれを巨額の費用を投じて、全世界に先駆けいち早く導入したのが日本であり、俺達が住むこの神田市だったわけだ。
『特殊政令指定都市神田市』
流入してきた人々が形成した、偽りの天国(ヘヴン)――。
その強固な鳥かごに覆われた青い空は、気味が悪くなる程澄みきっていた。
ふと腕時計を確認する。
マンションから俺が通う、この街唯一の公立高校『神田高等学校』まではだいたい歩きで20分程度だ。
今は7時20分。
始業の8時まではまだまだ時間がある。
少々遠回りになるが近くのコンビニで昼飯を買う時間くらいはあるだろう。
神田高校へは一度マンションから左に曲がり、メインストリートに出ないとならない。
だが一番近いコンビニへ行くためにはマンションから右へ曲がった方、つまりこの街で言う旧国道へ足を向けなければならない。
だから遠回りになるんだが、昼休みのお約束……。
購買パンの争奪戦だけは参戦したくない。
男女入り乱れてのあの争いは本当に尋常じゃない。
ましてやこのご時世……。
身を守るために誰だって護身術や格闘技の類いはかじってる……。
そんな暴力の嵐みたいな所にはまだ突入したくはない。
そんなわけで俺は毎回コンビニ弁当を買いに通学路をわざわざ遠回りするのが日課になっていた。
ちなみに、この街には公立高校は一つしかないが、私立は何校か存在する。
そこに通うヤツのだいたいが金持ちの子息子女だったり、政府やこの街の権利者の息子だったりするが、そいつらは俺達が住む外縁部何かには住んでいない。
奴等は一番安全で身の危険が及び辛いであろう街の中心部に住んでいる。
奴等の中には自分達を特別視して、俺達をバカにする連中だっているが、この街では少数派らしい。
関東は例の災害を受けた分、それらの脅威を分かっているし、連帯感だってある。
一番質が悪いのが攻撃を直接受けていないその他の地域の連中だった。
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