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人間の精神なんて物は脆いもんで、ちょっとした優越感と、支配欲があれば平気で他者を踏みにじる。
それと同じ事がやっぱりこの街でも起きてるんだろう……。
本当に嫌になるが、少し中心街に行くと周囲の視線は気になるし、外縁部と違ってインフラも格段に整っている。
そりゃ自意識過剰にもなるわぁな。
半分以上呆れているが、両親はそういった“選民意識”って言うのが大嫌いな人種らしく、金が有るのに居心地がいいとかで中心街への引っ越しは考えていない。
たまにしか帰って来ないクセに………とか思ったりするが、その点では両親に感謝している。
何しろこの地域、学校も含め俺には全て居心地がいい。
とりあえず無駄な小難しい思考から昼飯は何食べようとか食い物の方に考えをシフトして、朝の日差しの中を歩く。
まったく……。
こんな朝早くから世界情勢、神田市の情勢なんて物を塾考させるなんて、とんでもない課題だ――。
担任が出した理不尽極まりない量の課題に文句を吐き、コンビニに入る。
店内は極力装飾を無くし、シンプルで無駄がない作りになっている。
広い通路に低い陳列棚。
並んでいるのは携帯食料などの保存食やマスク、薬、包帯や絆創膏など医療用品。
そしてペットボトルの清涼飲料水や牛乳などの水関係の品、弁当やおにぎり、パンやサンドイッチと言った生鮮食品だ。
黙示録前にはコンビニエンスストアと言うだけあって、ありとあらゆる様々な物が売られていたらしいが、物がない今ではこれだけ揃っているコンビニは珍しい。
俺は食料売り場に売られていた弁当を掴んでレジに向かった。
今日はいつもレジを打っているおばさんではなく、大学生風のカワイイ感じの女の人だった。
ちょっとドキドキしながら金を払い、釣を貰う。
笑った顔がまぶしい―――!!
絶対に明日も来なければ!!
コンビニを出て、
何とかお近づきになりたい!!
とかアホな事を考えていた時、目の前の旧国道の端をスッと何かが横切った。
女子高生?
漆黒の艶やかな長い黒髪をなびかせた、透き通るような白い肌の少女―――。
それはまるで白紙に落とされた墨汁のように鮮明であり、砂漠に浮かぶ蜃気楼のように歪んで見えた。
唯一ぼ~っとした俺の頭の隅で分かった事は、彼女の制服が中心街にある有名な私立高校『稜星学園』の物である事だけだった――。
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