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だが俺にだって取って置きって物はあるんだ。
「ふっ。残念だったな龍よ……」
そう言って勝ち誇ったようにわざと笑ってやる。
案の定龍一のヤツは顔をムッとしかめて、少しズレた銀縁メガネを直した。
「何が残念なんだ?」
なんだ?こいつ今日が部活の日だってのを忘れてんのか?
「おいおい。今日は部活の日じゃねぇか。お前も2年なんだから、ちっとは自覚持てよ……」
俺と龍一が所属している神田高校剣道部は、この市内でも強豪で練習も厳しい。
防災の規定で、活動は一週間の内最も天使の襲撃が少ない日取りを統計で算出し、その日の午後6時までと厳格に定められている。
その為、市内で行われる大会には各校とも少ない練習時間で臨む事になり、自然と練習も厳しくなるのだ。
練習は少ない時間で行うし、日数も少ない。
だから他の部活とは違って、毎回指導する先生、鬼教師の千藤が来るんだが、こいつの練習は死ぬ程辛い……が、充実して俺としてはすごく楽しい部分もある。
今日はその部活ができる日であるし、その用意だって朝学校へ来る前にちゃんとしてきた。
そんな来るか来ないか分からない他校の女子を待つより、俺としては明らかに部活に出たい。
それに無断で部活をサボったら、あの鬼教師の千藤、通称『鬼セン』に何をされるか分かったもんじゃない。
「あぁ。それなら今日鬼セン休みだから、部活は中止だってよ。よかったなぁミー」
何~!!?
今なんと言ったこのインテリメガネ野郎は?
「お前それマジで言ってんの?」
そう言った俺の問いに、龍一のヤツはメガネをキラリと光らせて諦めろとのたまった……。
あぁ……。
大誤算だ……。
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