終わりの後 After an Ends

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俺、黒神御景が住むこの街、神田市は旧都、つまり俺達『新生人』の間で言う東京から車で約3時間程走った所にある地方都市だ。 昔、つまり黙示録前まではだいぶ人口が少なくなっちまってたらしいんだが、あの後から今にかけて旧都周辺の街やら何やらから次々に人が流れこんできて、ちょっとした都市を形成したらしい。 人が集まれば金も集まる。 金が集まればインフラも整うってことで、今は昔と比べてだいぶ暮らし易くなったと親父がぼやいていたのを聴いたことがある。 と言ってもまだまだこの国は復興したとは言い難いし、何しろ生死にかかわる脅威がわずか車で3時間程度の所に放置されたままだ。 あの掃討作戦の後、アメリカは対天使の為の兵器を開発。 全世界に向けてその兵器『A.I.G.I.S』を送り出した。 だが、その直後にアメリカは国外だけでなく国内からもバッシングを受けた。 元々ユダヤ教徒やキリスト教徒が多い国だったが、それが仇となった。 彼らは信じていた神に裏切られたと嘆き、死の天使の槍に歯向かおうとはしない者ばかりだったからだ――。 そして呆気なくアメリカは崩壊した。 次いでイギリス、フランスと言ったヨーロッパ諸国が崩壊し、それに続くようにイスラエルやイスラム教の国々、つまり一神教の国々が次々と滅亡した。 後に残ったのは一神教の宗教とは無縁の国々と、それでもまだ闘おうとする者達だけだった。 考えてみればアメリカが残した唯一の功績、対天使兵器『A.I.G.I.S』のおかげで俺達はこうして生きていられる。 どっかの国のお偉いさん連中には、アメリカやヨーロッパ諸国が滅んだのは天使とは別の理由があるとか何とか言ってるヤツもいたし、世界にはまだ神のご意志がどうのとか言ってる気違いだっている。 でも俺達『新生人』、黙示録の後に生まれた連中はこの世界しか知らないし、生まれた瞬間から白い翼の脅威に晒されてきた。 もう人類は終わりだなんて言ってるヤツもいるが、俺はそうは思わない。 なぜなら本当に神なんてロクでもないヤツがいるんだったら、こんな世界になった時点でそんな考えのヤツなんか真っ先に消されちまうと思うからだ。 だから俺は―――必死に今を生きる。 それがこの暗黒時代に生まれてきた俺達の義務であり、死んでいった先人たちに対する責任だと思うから……。
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