うつけの噂

2/14
1974人が本棚に入れています
本棚に追加
/255ページ
「藤~」  俺は藤の部屋に入って、その名前を呼ぶ。  木下藤吉郎の名前を。 「はい。どうなさいました? 巽さん」  最近、普段呼ばれない、巽という名前で呼ばれるようになった。  最初は少しくすぐったかったりしたし、自分のことのように思えなかったりもしたんだが、もうなれてしまった。 「剣術の指導をしてほしいんだが、今時間あるか?」  少し考える時間があって。 「はい。喜んで!」  悩んで、と言っても、多分予定と照らし合わせてたんだと思う。  結構俺の頼み事を快く引き受けてくれるからなぁ。藤は。 「場所はいつもの所でよろしいでしょうか」 「了解。じゃ、いこうか」 「はい」
/255ページ

最初のコメントを投稿しよう!