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その頃。犬夜叉達は大急ぎで犬夜叉の鼻を頼りに弥勒の元へと向かっていた。
「……ん?」
「どうしたの?」
犬耳を動かす彼に、かごめが訊ねた。
「…何か来るぜ」
「妖怪だったら、あたしが先に片付けて来ようか?」
「雑魚に手間取ってる暇はねえな」
誰もが身を引き締めたその時、上空から黒いものが飛んで来る。
「何じゃ?」
「すげえ妖気だ…」
よく見ると、それは妖怪の大群だった。大きさも妖気の強弱もバラバラだが、所詮は雑魚だ。
「はっ!あんな大群を迎え撃つのは久々だぜ!」
嬉しそうに腰の愛刀・鉄砕牙を抜き、勢いよく一閃すると、妖怪の数が半分に減った。鉄砕牙は『一振りで百匹の妖怪をなぎ倒す』と謳(うた)われた妖刀で、彼はこれを完全に使いこなしている。
「犬夜叉、どんどん来るよ!」
「わかってらあ!」
かごめと七宝を背に乗せたまま、今度は巨大な竜巻状の『風の傷』を一発放った!
竜巻は妖怪の大群を飲み込み、骨も残さずキレイに粉砕してしまった。
重い空気が周囲に満ちていた。弥勒は目の前にいる半妖の少年に、もう一度問いかける。
「あなたは誰ですか?」
少年はその問いに答えず、素早い動きで法師の背後へと回った。
爪は墨染めの衣ごと背中を引き裂く。
「つっ…!」
一瞬だけ感じた熱い痛みに、動きが鈍る。続けて来た爪攻撃を後ろに一歩跳んでよけた。
「〝縛〟!」
鋭い声に、犬夜叉の全身が見えない糸で縛られた。腕はおろか、指一本も動かせない。
「…くっ…!」
その間に両手で素早く何かの印を結ぶ。その印は、祠の前で結んでいた印と少し似ていた。
「こんなもんで…俺を縛れ続けると思ったか…?」
弥勒の目には、彼を束縛していた念力で出来た糸が、次々に切れていくのが見えていた。そろそろ切れるだろう。
「甘いんだよっ!!」
両腕で、見えない糸を完全に断ち切った。
その瞬間。
「弥勒―っ!」
背後から、声が聞こえた。
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