分岐点

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「お散歩したいなぁ~」 つぶやいて見上げたその視線の先は空ではなく、シェルターの天井。 太陽光を意識してかなかなか直視するには眩しいがやはり建物の天井であり、光はライトから発せられるものである。 ここ、第三ホームは特殊シェルターによって「外」にいる悪魔から人々を守る施設であり、自分の身を守れない女子供が主に居住区として利用している。 「ホームも、もう歩き飽きたしなぁ~」 家族を亡くしてもう数年、この第三ホームでの生活もすっかり慣れて共同体が開設するスクールももうすぐ卒業だ。 スクールでは、現在のトウキョウの事、トウキョウで生きていくために必要な知識などを教え簡単な資格の取得などもできる。 孤児の生活は共同体からのある程度の支援はあるものの、それだけでは生活もままならないので子供もみな何かしらのアルバイトなどをしながら生きていた。 つぶやく少女の名は月満亮。 その名の通り「明るくはっきり」とした性格で、友達も多い。 しかし、探究心が旺盛なためなかなか彼女についてくるまでの友達はいなかった。 彼女の探究心は「散歩」の一言に尽きる。 この散歩が巻き起こす事態は大人の肝を冷やすのですっかり問題児扱いされていた。
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