分岐点

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「そうか、では手続きをしておくので、スクールを卒業したら行きなさい。 卒業後、ここに資料を受け取りにきなさい、その時に細かい説明をしましょう」 にこりと満足そうな笑みを浮かべる教授は飛びついた亮の背中にゆっくりと手を回し、ぽんぽんと赤子をあやすように軽く叩く。 「その目で、世界を見てきなさい。亮、君ならそれも可能でしょう、ただしくれぐれも自分の命は大切にしなさい。」 出席の点呼以外で、初めて名前を呼ばれたこの時を亮は忘れない。 第三ホームというシェルターを出て世界を見せてくれるこの人の事も。 自分の世界は今までもこれからもこの箱の中だけだと思っていた、それが全てだと・・・ たくさんの地名は教科書で見るだけでそこで活躍するDBの話を他の子供と同じように、物語のヒーローのように感じていた。 自分も、子供達に憧れる存在になれるのだろうか。 こうしてこの老人が次世代の子供を教える時に自分の話をして欲しい、そうなるDBになりたい・・・ 現実はそんなに甘いものでもないし、命も関わる、また自分が合格するのかもわかりはしない。 だが、この瞬間がとても大切なターニングポイントである事は間違いない事を亮はしっかりと感じていた。
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