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「んっ…」
どれくらい時間がたったのだろうか…未来はやっと目を覚ました
「未来…?未来…!」
未来の目の前には母がいた。ずっと手を握りしめていたのだろう…左手だけが暖かい
「今…お医者さん呼んでくるから!」
そういうと彼女は部屋をでていった。どうやらここは病院の一室のようだ
誰かが未来を発見したのだろう
「…俺、なんで?」
未来は何かを思い出そうと必死にあたりをキョロキョロと見渡していた
ガラッ
「失礼するよ」
入り口には医者と母が立っていた。医者は母と対して変わらない年代のようだった
「未来君…何があったか覚えてる?」
医者は優しく、なだめるように未来に問いかける
「…旅行来て、風呂入って…真里と話して…そしたら、悲鳴聞こえて…っ!?」
一生懸命記憶を辿ると急に激しい頭痛に襲われた
「み、未来!!」
「未来君!落ち着いて!」
未来は頭を抱えうずくまる。母は手で口を押さえ今にも倒れそうだった
「知らない…知らない!何も知らねえ!俺は何も見てない!何もしてない!」
「未来君!」
未来が叫びそれよりも上回った声量で医者は未来の名前を呼ぶ
「俺は…俺は…」
「ゆっくり休もうか…」
医者は未来を横にし、持っていた注射を未来に刺した。すると未来はすぐに寝息をたてた
「お母さん…」
「はい…無理には思い出させません…真里にも言っておきます」
ここにいない真里は未来が眠っている間その傷ついた姿を見て走って逃げてしまった
あのとき止めなかった責任を感じ…
そして未来は父が亡くなったことに関する記憶だけを無くしてしまった
父は仕事でいない、とそう言い張るようになった
だから明るさも今まで通りだった
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