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徳井が歩く度にガサガサと音が鳴る。事務所に届いたものは宅配便で送ってもらったらしいが、出待ちにでも貰ったか。
自分の鞄と共に置いてある、事務所から渡された紙袋に思いを馳せながらキュウリを刻む。同じ男なのに…不公平や。
「かー、相変わらず本格的」
「…そりゃどうも」
ごく自然に肩に顔を乗せたまま喋るのは止めて欲しい。耳がくすぐったい。
「んふふ」
「何ね気色悪い」
大抵こういう笑いは、
「何か福ちゃん、新妻みたい」
ろくでもない事を言い出す予兆。
「あー、そー」
何か構うのがどうでも良くなって、約二呼吸後に気のない返事を返す。
「何や、反応がつまらん」
頬を膨らませながら俺の腰に腕を回す。非常に動きづらいんですけど。
「何度も飯なら作ったったろ?何で今更新妻やねん」
あと邪魔、と徳井の腕を叩く。やってなぁ、と皿を取りに行く俺の後ろを文字通りくっつきながら徳井が漏らす。
「フリフリエプロンが似合いそうやったから」
「わー」
「着る?」
「着ぃへん」
「あ、付ける?」
「述語の問題やあらへんから」
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