V.D

5/7
前へ
/467ページ
次へ
「いただきます」 「どうぞ」 ぷし、と缶の栓がなる。 開けてから考える。夕食と共に酒を飲む男と、カレーをウキウキとつつく奴。 酒好きと甘いもの好き。 どう考えても俺の方が男っぽいのに、こいつは男前で、俺は良く可愛いと言われる。 「(外見と中身は比例せんもんやね)」 …別に自分外見が可愛いと思っている訳では無いが。 「…? どしたん?」 スプーンをくわえたまま固まる徳井に、少々の不安がよぎる。いや、今日も完璧な味だった筈だ。市販のルーだし。 「ルー、変えた?」 「いや、いつものやけど」 「ふーん」 無表情でカレーを見つめる徳井によぎったそれが段々積もっていく。変わったことなんて何も―― 「(あ、)」 にんまり笑った徳井に、『隠し味』を入れたことを思い出した。 「全く、福ちゃんは素直やないなぁ」 「何がやねん」 頬は赤くなっているだろうが、こいつの言い種が気に入らないので、所謂ツン全開。いや、ツンデレじゃないが。決して。 .
/467ページ

最初のコメントを投稿しよう!

501人が本棚に入れています
本棚に追加