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「いらっしゃい、サクラ。その顔だと、今日はシュウが帰ってくるんですね?」
「あ、分かります?」
頭を掻きながらカウンターへ座り、マスターはいつものブレンドのお茶を差し出してくれる。
「サクラは分かりやす過ぎるんですよ」
「よく言われます」
「最近物騒な事件が相次いでますからサクラも気を付けて下さいね? そんなに分かりやすいと、簡単に騙されますよ?」
「は~い、肝に命じます」
そう、最近世界中で行方不明者が増えてるらしい。遺体で発見される事もしばしば。
大概は町の外で起きてるらしいので、女性や子供はあまり外には出ない。
町の中で充分事足りるので、わざわざ町の外に行く人もあまりいないけど。
「おや? 王子様のお帰りですよ?」
マスターが窓の外に向かって手招きをしている。
筋向かいのギルドから、銀糸の髪を揺らしてこちらに向かって駆けてくるのは、愛しの君。
私は席を立ち、本来優しい音色の鈴を激しく鳴らしながら外にでた。
そして、愛しの君の胸の中へ。
「お帰りなさい! シュウ!」
「ただいま、サクラ」
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