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体育館は、案の定、いや、予想通り、人で溢れ返っていた。
うちの学校のクラス発表は、一斉に行われるのだ。
なので、体育館には、すでに入学式でクラスが分かっている1年生を除く、2学年がひしめきあっていた。
所々で、悲鳴や歓声が上がっている。
俺達は人混みを掻き分け、やっとの思いで、3年のクラス貼り出しのある掲示板にたどり着いた。
「……案の定、だな。」
「…だな。」
俺達は、盛大にため息を吐いた。
その時、後ろから、
「京ちゃ~ん♪」
「修ちゃ~ん♪」
ドンッ
ドンッ
「くっ、やっぱり、か…」
「うっ、バスケだけじゃ、無理、か…」
俺は、足元をふらつかせながら、ヨロヨロと立ち上がった。
隣を見ると修平も腹を抑えながら立ち上がっている。
俺は未だに腹に抱きつく小さな物体を見下げる。
その茶色の物体は、毎度のことながら、高速でタックルをかます。
段々と慣れるはずなのだが、向こうのスピードも回を増すごとに格段に上がっている。
バスケットで鍛えた修平すら対応できない程の高速いや、音速タックル。
もちろん、普段から運動に勤んでいるわけでない俺に対処できるわけなく、毎回その餌食となっているわけだ。
まぁ、なんとなく鍛えられているような気もしないではないが…。
「小百合、この強烈な挨拶はなんとかならないのか?」
俺は自分でも自覚しているが、そのままの苦笑いを浮かべ茶色の物体に話しかける。
物体は、俺を見上げ、首を傾げ口許に人差し指をあてる。
「…愛情表現?」
なんとも納得し難い回答だ。
愛情表現なら、もっとまともなモノを所望したいが、残念ながらその辺は長年の経験上、期待できそうにない。
「…そうか。」
と、短く返すことしかできない。
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