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「キツイ…な…。」
修平は当たりどころが悪かったのか、男の性を抑えながら身悶えている。
憐れなやつだ…。
悠里も加減してやればいいのに…。
毎回、一直線にそこにむかう。
変態だな…。
「じゃ、教室行くか…。」
俺は修平に軽く手を合わせ、キョトンとした悠里と小百合を置いて教室に向かった。
「あっ、京ちゃん待ってよ~。」
慌てて小百合が追いかけてくる。
気にしない。
どうせ現役陸上部の小百合の方が、断然、足は早いわけで、さして気にかける必要もない。
「…京一…ま」
修平の断末魔は、無視するに限るな…。
傍らの悠里は、棒で修平をつつくというなんとも古典的な扱いをしている。
「なぁ、小百合。お前、陸上部の集まりがあるんじゃないのか?入学式なんだし…。」
部活の連中は大抵、勧誘のために朝は集まるはずだ。
案の定、小百合はびっくりした顔をしていた。
両親といい、姉といい、よくもまぁ、いい加減な奴らが集まったもんだ…。
「早く行けよ…、遅れたら、また主将に怒られるぞ…。」
俺は、手を振って、早く行けよと表した。
「うぅ…わかったぁ…浮気したら、駄目だからね…。」
小百合は、恨めしそうに俺を見て、よくわからない捨て台詞を残して去って行った。
やれやれ、だな。
浮気の定義はよくわからないが、別に教室に入ってもやましいことなんて起こるわけはないし、第一、入った途端に誰かにぶつかって、どこぞのツンデレお嬢から罵声を浴びせられるなんていうラブコメ的展開が、この平凡かつ凡庸な俺に起こるわけはな…
ドンッ
教室の扉を開けた瞬間に何かにぶつかった。
本日、2度目の衝撃に耐えきれず、そのまま後ろに倒れる。
「……まさか……。」
俺は目の前にある銀色を見つめて、先程までの想像を後悔した。
銀色の物体は、只今、俺の胸元で頭を押さえ悶絶中だ。
「いったぁ~い。」
銀色の彼女は涙を溜めて、俺を見上げる。
本人は、睨んでいるつもりだろうが、どうも角度的に上目使いにしか見えないため、恐ろしさなんて微塵も感じない。
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