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まさに期待通りの展開が来てしまった。
「ぅう…何か言いなさいよぅ~。」
あまりの出来すぎ具合に思わず、唖然としてしまった。
何も言わない俺をなおも睨みつけながら、少女はまだ痛む頭を自らの手で擦っていた。
「……。」
それでも、何も言わない。
平凡、平和を望む俺にとってこの展開はあまりにも好ましくない。
絶対的に展開してはならない状況だ。
「ふんっ、もういいわっ。」
少女は、呆れたように立ち上がり、パンパンッと自らのスカートの埃を落とすように叩く。
スカートを叩く度に、彼女の髪は少し揺れる。
その髪は透き通るように美しく、思わず触れたくなるような魅力を持っていた。
「なに?」
少し低めの声が俺に降ってきた。
「なんでもない。」
ここで、髪が綺麗だとかなんとか言えばいいのだろうが、生憎、俺にそんな甲斐性はない。
彼女の髪が綺麗なのは、別に俺にとってどうでもいいことなのだから。
これで、これ以上の発展はなさそうだ。
「…貴方、名前は?」
何故か展開した…。
予想外だ。
「雲雀。」
まぁ、名乗らないのは常識に反するしな。
「ふぅ~ん、貴方が…。」
彼女は、品定するように俺を見回す。
そういえば、俺は立つのを忘れていた。
なんとも情けない格好を晒していた。
「……。」
無言で立ち上がり、俺も埃を叩いた。
「……。」
耐えがたい沈黙だな…。
とりあえず、俺の進路を塞がないで欲しい。
俺は、教室に入りたいだけなんだ。
「私は、藤堂理沙。よろしくね、鉄仮面さん。」
…聞いてもないのに、名乗られた。
なおかつ、変な名前までつけられた。
鉄仮面って、古くないか?
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