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当事者の俺をよそに部活討論が始まった。
「ま、俺は入るつもりはないけどな…。」
俺が小さく呟くと、一斉に3人がこちらを向いた。
「どうした?」
突然、振り向かれた理由がわからない。
何とも冷たい視線が突き刺さる。
「いや、それは駄目だ。この際だから、どれかに入ってもらう。」
きっぱりとした表情で、俺を見据える修平。
「俺はべつ…」
「京ちゃんは、どこにするぅ~?」
俺を無視して、質問する悠里。
「フットサルにしようよぉ~。」
悠里も無視する。
「バスケ部だよなぁ~。」
修平すら、無視する。
「なぁ、おい…」
「よし、じゃあ、今日から体験入部だなっ。」
「うん。それが平等っ。」
「仕方ないなぁ~。京ちゃんのためだもんねぇ~。」
3人が納得したように頷き合う。
俺は、やっぱり蚊帳の外。
自分のことなのに置いてけぼりだ。
「じゃ、今日は、バスケ部からだな…。女子も合同だから、な。」
ニカッと笑ってみせた修平だが、別段興味が湧かない。
むしろ、帰りたい。
「京ちゃん、浮気したら駄目だよぉ~。」
また小百合に念を押された。
いや、だから、平凡かつ凡庸な…
駄目だ…このせいで、今日は俺の生活が揺らぎかけたはずだ。
いらぬ想像は、無駄な波乱を呼ぶだけだ。
俺は、無心になることに決めた。
今日からの3日を耐えれば、きっと平凡な日常が帰ってくるはずだ。
「よし。善は急げだっ。行くぞっ。」
またもや、俺を無視して、首を掴みズルズルと引っ張っていく修平。
ここまでくると、人権侵害だな…。
「「行ってらっしゃ~い。」」
小百合と悠里が微笑んで、俺を見送った。
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