19人が本棚に入れています
本棚に追加
俺が嫌々コートに向かうと、修平が迎えてくれた。
「お前、ちゃんと練習しろ…。俺が迷惑だ。」
嫌味を込めて言ったが、修平は首を傾げた。
「何の話だ?」
「主将が、お前が俺がいないと練習を真面目にしないとか、言われたぞ。」
俺は主将が伝えた言葉をそのまま伝えた。
「……?あっ、お前、主将に気に入られたなっ。もううちに入るしかないな…。」
修平は、すぐに合点がいったようで手をポンッと叩いた。
「は?何のことだ?」
納得できない。
何故、気に入られるんだ?
「主将に騙しは効かないって。お前が運動神経抜群なのなんて、すぐバレるって。あの人、そういうの見抜くのだけは一流なんだよ。」
………最悪だ。
常日頃から、イメージトレーニングで自分を騙してきたのに…。
ま、どうせ本気なんて出さけりゃいいんだ。
「おぃ、わざと抑えんなよ。バレるぞ。ちなみに手抜きがバレたやつは、その場で体育館の端までぶっとばされたんだぞ…。」
他人のように話しているが、修平自身の体験のようだ。
目が泳いでるし、肩が微妙に震えている。
ただ一つ、理解した。
本気でやらなきゃ、確実に死を見ると…。
「…わかった。けど、入る気はないから、な。」
「よし。じゃ、京はどこやりたい?」
修平は、やけに嬉しそうにしている。
「どこでもいい。それよりミニゲームって、ハーフコートか?それともオールコートか?」
ハーフかオールで、俺の気持ちは随分変わってくる。
つまり、体力的に楽か否かそれが重要だった。
「ん?オールじゃないか?なんか主将が真ん中に立ってるし…。」
見ると主将は、でんっと中央にボールを持って待ち構えていた。
「間違いなさそうだな。」
俺は仕方なく、中央に向かった。
「試合を始める。先輩と一年生じゃ、体格差もあるだろうから、一年生ボールから始める。整列っ。礼。」
主将がボールを渡すと一年生、上級生共にコートに別れた。
「なぁ、修平。俺は何処にいれば、いいんだ?」
俺は、コートに皆が散っていく寸前に、修平を呼び止めた。
「京一は、昔みたいに自分に来たやつのボールを取りにいって、取ったら単独でゴールに向かっていいよ。いきなりチームプレイなんて、無理だろ?」
修平は、グッと親指を立て、ニカッと笑った。
「了解。じゃ、勝負だな。お前らと俺がどっちの方が点数とるか。」
最初のコメントを投稿しよう!