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ガラガラ
俺は、扉を開き、授業中の教室に乱入を果たす。
もちろん、視線が集まる。
始業式の次の日に遅刻って、どんだけ印象悪いんだよ…。
「すいません。遅刻しました。」
どうやら、英語の時間のようだ。
黒板には、所狭しとローマ字が並んでいた。
最悪だな。
まさかのクリスティーナの授業だ。
教室の一部から同情の視線が向けられている。
多分、去年、同じクラスだった連中だ。
説明しよう。
クリスティーナとは、その名前の通り外国人だ。
ボブくらいの長さのブロンドに、青い瞳、皆が連想する外国人の模範のような女教師である。
加えて、グラマラスな体型にかなりの美形である。
そして、侮ることなかれ、
「京、謝ったのは正しいですが、遅刻はいけません。まず、紙を提出しなさい。」
かなり流暢な日本語を操るのだ。
しかし、それだけなら、何の問題もない。
問題は別にある。
「はい。クリスティーナ先生。」
俺は、クリスティーナに遅刻届けを渡す。
「………。」
予想通り、クリスティーナは紙を受け取らない。
ていうか、完全に無視している。
「あの、クリスティーナ先生、紙を…」
しかし、全く受け取らない。
返事もない。
「………。」
また要らぬ誤解を招きそうだ。
修平に視線を送る。
苦笑いで返された。
仕方ない。
「…クリス。」
「はい、京。」
さっきまでの表情とは打って変わって、飛びっきりの笑顔で答えるクリス。
その笑顔は嬉しいんだが、何分要らぬ誤解を招いてしまう。
「…遅刻届けを。」
漸く、クリスは遅刻届けを受け取ってくれて、俺は無事に席に着けた。
クリスティーナ改めクリスは、俺にだけそう呼ばせるのだ。
先生とつけてもいけないし、クリスティーナと呼ぶとさっきのように返事すらしてくれない。
まぁ、好かれて悪い気持ちはしないけど、今年もその誤解を解くとなると、気が滅入ってしまう。
去年は、全ての誤解を解くのに半年もかかった。
あの修平達ですら、1ヶ月も疑っていたのだ。
今年も前途多難な様子だ。
満足そうに授業を進めるクリスをよそに、ため息しか出なかった。
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