家族なり

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スルスルと、特に引っ掛かることもなく、すんなりと通っていく。 子供の髪は綺麗だ。 「よし、終わり。亜紀はするのか?」 俺は、後ろでずっと覗き込んでいる亜紀に振り返った。 「うん♪」 亜紀もちょこんと前に座った。 またもスルスルと櫛は通っていく。 解かす必要があるのだろうか? 妹達が満足するのであれば、問題ないんだけどな。 「あ、沙希、林檎出してくれないか?冷蔵庫に入ってるはずだ。」 「はぁ~い♪」 と、まぁ、こんな風に俺の朝は、過ぎていくわけだ。 ここで先に断っておくが、俺は決してシスコンではない。 まぁ、人から見れば、どう写るかしらないが、俺が認めていない以上、シスコンではないのだ。 我思う故に、我在り。 だったか? あってるかわからないが、俺は自分なりの解釈で納得しているから、いいんだ。 「お兄ちゃん?頭痛いの?」 亜紀が俺を見上げている。 俺は、そんなに険しい顔でもしていたのだろうか? そりゃあ、普段、あまり、使っていない頭を駆使して、難しい哲学やらを持ち出してはみたが、妹に心配させる程だったんだろうか? 「そんなに険しい顔してたか?」 「うん。こ~んな顔してたよ~。」 亜紀は、一生懸命に眉間に皺を寄せている。 本人は、頑張っているようだが、まだまだ小学生。 可愛らしさこそ感じるが、険しいとは微塵も感じないな。 「そうか。心配してくれて、ありがとうな。」 俺は、亜紀の髪を撫でてやった。 亜紀は、ニッコリ笑って答えてくれた。 「お兄ちゃ~ん、早く行かないと間に合わないよ~。」 玄関から、沙希の声。 いつの間に行ったんだ? なんともすばしっこいやつだ。 「よし、行くか。」 俺は、亜紀を抱き上げ、玄関に向かった。
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