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今、俺は桜並木を歩いている。
もちろん、沙希と亜紀も一緒だ。
「綺麗だねぇ~♪」
亜紀は、ずっと上を向いている。
「亜紀、こけるぞ。」
上を見ながら歩く姿は、とても可愛らしいが、その体に見合わないランドセルに負けそうで怖い。
実際は、こけたとしてもランドセルがクッションになって、なんともないんだけれど…。
亜紀のお気に入りのランドセルが崩れてしまうのは、俺も心が痛い。
一応、手はつないでいるけど、な。
「だって、綺麗だよ~。お兄ちゃんは、嫌い?」
亜紀が、首を傾げて聞いてくる。
「いや、むしろ好きな方だな。」
その言葉にニコニコする亜紀。
無言だ。
嬉しさは、十分に伝わるけどな。
「沙希は好きか?」
俺は反対側で同じように見上げている沙希を見た。
「う~ん。お兄ちゃんが好きなら、好きかな?」
微笑んでくれてるのは、嬉しいが、微妙な解答だな。
「そうか。今度、花見にでも行くか?」
「本当?」
沙希は疑わしげな表情で見つめてきた。
まぁ、この視線も仕方ない。
なんせ、この間から、とある理由で、色々とすることが増えて、沙希達と約束していたことのほとんどを消化できなかった。
だから、当然の眼差しである。
亜紀ですら、疑いの目を向けている。
小学生なんだから、もっと純粋に信じて欲しいもんだな。
原因は、俺だけど。
「あぁ、本当だ。桜が散るまでに行こうな。」
俺は、精一杯の笑顔で答えた。
「やったぁ~!!」
勢い良く手を上げる。
この辺はまだまだ子供だな。
「亜紀はぁ?」
淋しそうに、俺を見上げる亜紀。
…うん、なんて言うんだろうな。
可愛過ぎる。
「もちろん、亜紀もだ。弁当は何にする?」
「う~んと、ねぇ、おにぎりとぉ~、ウィンナーとぉ~…」
それから、3人仲良く、花見の話で盛り上がった。
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