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「勘違いしないで下さいね、幼なじみって言ったでしょう?一応兄みたい慕ってますので。」
「……あぁ?うん。」
真聖が歩きながら制服の胸ポケットから取り出した、校章入りのピッチを使い注文をしてる。
…そうだよな、まさかそんなドツボにハマるわけないよな。…絢は今をときめく有名人だし。
「あ、いてっ!」
そして丁度角を曲がった所で俺は何かにぶつかって後ろによろめく。
真聖はと言うと簡単に終わらせた注文にピッチをしまおうとしてる中、かなり驚いた様子で俺の向こう側を見ている。
「か、…華柳副会長。今たしか兄妹校の会議に会長達と行っているのでは…?」
「…………。」
真聖から告げられた言葉の色はあからさまな動揺が伺える。
沈黙を破る事なく佇むソイツを見ると息が詰まる、すらりと背は高く端正な顔立ち…顔は絢には負けていない。そして何より漂ってくる気品。
ここに来るまで、校舎内で色んな奴と擦れ違ったり声を掛けられたりしたけど、一般人の俺からでも解る。コイツは別格だ。
「華柳先輩?」
「何だ、華厳院。」
「…いえ、別に何もありませんが…。」
「…俺は今から少し出て来る、今日絢が帰って来る筈だから絢を見かけたら会議室にある今月分のアンケートの集計をするように伝えとけ。」
「…解りました、行ってらっしゃいませ。」
俺をちらりと見て、ソイツは真聖に命令してから静かに立ち去った。
そして俺は呆気に取られる、だって真聖が従者のように深々と頭を下げてソイツを見送ったから。
「相変わらず忙しそうですね。」
「な、なぁ…あの偉そうなのは誰なんだ?」
「…華柳 葉澄様、二年生で副会長…この学園始まって以来の御曹司で逸材と言われている方です。会長だって一目置く方なんですよ。」
「へぇ。」
…学園の裏ボスみたいな感じか。
つーかアイツの周りだけ光が射して見えたのは俺だけだろうか。
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