1話 とりあえず帰りたい

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時任 悠哉、17歳。 何においても平凡、でも体育は得意だな。バスケとか。 そんな俺は今、城みたいな建物を前にして立っている。 三つの塔の上にエンブレムが描かれた三角旗、石造りに似せたモダンな城壁、いやぁこれは良い仕事してますね。 …さて、誉めちぎった所で…とりあえず帰って良いのだろうか?いや、駄目だろうけど…帰りたい。 第一目の前の城が学校ってのがありえねぇ、さっきから立派な門から出て行く長細い黒い車って…何!? そもそも事の起こりは俺のじぃちゃんが亡くなった事から。 残された遺言書に親友が営む学校に俺を通わせろとの事だったが、普っ通の学校なら両親は断っただろう、何せ俺が通っていた学校が並、普通なんだ、今更同じような学力の学校には通わせない、金も掛かるしな。 だが…実際は違った。 大名門中の大名門。 エリート中のエリート。 超絶金持ち男子校。 この学校の出なら一流企業に就職する時も一発採用は絶対だし、しかし学費がかかると両親は渋っていたが、学費免除の四文字で簡単に折れた。…親心は複雑だ。 両親が絶大プッシュする、そんな中…やっぱり編入試験があって受けた、受けたんだ、無理矢理。 平均偏差値78、俺の偏差値62…無理、落ちた。だが、人生はそう甘くはねぇ。だからこそ俺は今、全寮制故の簡単な荷物を持って門の目の前でカカシの如く突っ立ってんだ! つーかそもそも学校じゃねぇし!城だし!普通に生きたいんだ! 帰りたい。帰りたいんです。 だってこんな坊ちゃま連中が通うこの学校ってのはイジメがつきもんだろ?俺の中のイメージと言えばカボチャパンツをはいた坊ちゃまがメロンパン買って来いだのコーヒー牛乳買って来いだの、善良な一般庶民な俺を馬鹿にするんだ。 帰りたいぃぃい!!  
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