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「今年から『執事学』が開始される。それに伴い、この教科書と紙を配布するぞ。教科書は全国でもこの学校でしか使われていないから、無くしたら最低でも半年は発行されないと思え!!」
無駄に背のちっさい担任の言葉を聞き流し、俺・海藤祐司は、前の席から回ってきた数冊の教科書と紙の束を、後ろの席に回した。
辞書みたいに分厚い教科書とセットになっていた紙はアンケート用紙で、パートナーにする女子の名前を記す欄が設けられている。
「その欄に、パートナーとして選ぶ女子の名前を今から書いてもらう。フルネームで書けよ。フルネームがわからんやつは名簿を見に来い」
そんな事に名簿を使っていいのか…。
俺はシャーペンを持ってアンケート用紙に臨んだ。
…が、だれを書けば良いのかわからない。
白紙で出せば自動的にパートナーが決められるらしいのだが、話した事ないやつとか変なやつに当たったら嫌だし。
「海藤」
「んー…?」
前の席に座る大親友、前田邦宏が話しかけて来た。
「誰にするか決めたか?」
「まだだよ。成績が左右されるんだぞ、そう簡単に決められるかって」
「ふーん…」
そう言う前田の用紙には、もう誰かの名前が書かれていた。
スキを見て、前田から用紙を取り上げてやる。
「Σあ゙っ…!!」
前田が声を上げた時には、もう遅かった。
アンケート用紙を見ると。
「…『犬飼千代』…犬千代か。ふーん、なるほどねぇ…」
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