狭間1

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「どうかしました?」 潜在意識によって、表へと現れる事を許されなかった、その記憶の断片は、洋介に新たな恐怖心を甦らせ、再び困惑の世界へと突き落としていった。 「見えた!女が見えた!白い…白いワンピースを着ていた!」 洋介は、フラッシュバックしたリアルな事実を受け入れる事が出来ずに、ガタガタと震えている。 「ああーっ!白い塊じゃない!白い人間やった!!」 洋介は留美の手をきつく掴んだ。 その勢いで留美はよろめき、点滴のボトルやチューブを床に散らしながら、洋介の鼻先へ覆い被(かぶ)さった。 洋介の震えは止まらない。 「留美ちゃん…怖い…俺怖い!」 留美は洋介の震える頬を、優しく自身の胸に当て、静かに抱き寄せた。 「大丈夫よ‥大丈夫」 「……」 「……」 「……ごめん」 洋介はゆっくりと体をずらし、甘くも優しいその拘束を、自らが余韻を持って離れてゆくのだった。 「おっぱいにほっぺたが当たった…ほっぺたにおっぱいか?」 「あはは‥」 「旦那に殺されるばい!」 わざとおちゃらけて見せる。 雰囲気を取り繕うためでもある。 洋介は微笑みながら留美の顔を見た。 一瞬だが留美の瞳の奥に、冷ややかな憎悪の影が見えた様に感じた。 「どうしたと?俺なんかいらん事言った?」 留美はすぐさま顔をあげ洋介に微笑みを返した。 「ううん‥愛されとらんけん私……」 「ハハ‥そんな事ないやろう」 洋介は月並みな言葉ではぐらかそうとしたが、留美の目線は下へと落とされた。 「……ホントヨ」
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