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「びびったあー。あ!そっか…名前違うか」
「ふふ‥慌てん坊やね」
留美に、ようやく笑顔が出てきた。
「ねえ…その真紀って親友。留美ちゃん…まだ親友?」
洋介は恐る恐る聞いた。
留美は「まさか!」と言わんばかりの表情で大きく首を振る。そして、ため息混じりの呆れ顔へと変わった。
「洋介さん?旦那盗られて親友で居れる訳ないやん」
「そりゃそうやね……じゃあ、死んだ戸田忍‥さんは、言いよったように」
「そっ!ともだち……大切な人かな」
「ふーん…」
「洋介さん…ああ!私洋介さんなんて!た‥田中さん、ごめんなさい!」
留美は慌てて口を抑え、顔を赤らめながら頭を下げる。
洋介は留美の仕草に思わず微笑みを浮かべ、優しい口調で話し出した。
「いやいや、よかよ洋介で…しかも留美ちゃんずっと言いよったよ。洋介さんって」
「駄目です駄目です。」
留美は赤らめた顔をさらに赤くし、小さなゲンコツで頭をポカリと小突いた。
「留美ちゃん可愛いかねえ‥」
思わず本音が、笑顔の口からポロリと出てくる。
「ハハ‥田中さんやら言うたら口きかんけんね!」
「えーそんなの駄目ですよお‥」
留美の困惑した表情に、洋介は一段と魅力を感じていた。
留美ともっと仲良く成りたい……患者と看護師という関係じゃなく、無条件にもっと仲良く成りたい……漠然とではあるが、洋介はそう思っていた。
「じゃあ、二人だけの時はそう呼んで!ねっ!」
口を尖(とが)らせた留美は、洋介を見つめて、言葉にならない「うーっ!」 を眉間のしわと一緒に投げかけている。
「ハハ‥そんな顔しても駄目駄目」
「もう!替えの点滴持ってきます!」
留美はそう言うと、扉へ向かって歩き出した。
「留美ちゃん!分かった?洋介やけんね!」
「……」
扉を開ける留美の手に、少しの間があった。
「分かりました…努力します…」
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