狭間1

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「びびったあー。あ!そっか…名前違うか」 「ふふ‥慌てん坊やね」 留美に、ようやく笑顔が出てきた。 「ねえ…その真紀って親友。留美ちゃん…まだ親友?」 洋介は恐る恐る聞いた。 留美は「まさか!」と言わんばかりの表情で大きく首を振る。そして、ため息混じりの呆れ顔へと変わった。 「洋介さん?旦那盗られて親友で居れる訳ないやん」 「そりゃそうやね……じゃあ、死んだ戸田忍‥さんは、言いよったように」 「そっ!ともだち……大切な人かな」 「ふーん…」 「洋介さん…ああ!私洋介さんなんて!た‥田中さん、ごめんなさい!」 留美は慌てて口を抑え、顔を赤らめながら頭を下げる。 洋介は留美の仕草に思わず微笑みを浮かべ、優しい口調で話し出した。 「いやいや、よかよ洋介で…しかも留美ちゃんずっと言いよったよ。洋介さんって」 「駄目です駄目です。」 留美は赤らめた顔をさらに赤くし、小さなゲンコツで頭をポカリと小突いた。 「留美ちゃん可愛いかねえ‥」 思わず本音が、笑顔の口からポロリと出てくる。 「ハハ‥田中さんやら言うたら口きかんけんね!」 「えーそんなの駄目ですよお‥」 留美の困惑した表情に、洋介は一段と魅力を感じていた。 留美ともっと仲良く成りたい……患者と看護師という関係じゃなく、無条件にもっと仲良く成りたい……漠然とではあるが、洋介はそう思っていた。 「じゃあ、二人だけの時はそう呼んで!ねっ!」 口を尖(とが)らせた留美は、洋介を見つめて、言葉にならない「うーっ!」 を眉間のしわと一緒に投げかけている。 「ハハ‥そんな顔しても駄目駄目」 「もう!替えの点滴持ってきます!」 留美はそう言うと、扉へ向かって歩き出した。 「留美ちゃん!分かった?洋介やけんね!」 「……」 扉を開ける留美の手に、少しの間があった。 「分かりました…努力します…」
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