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「一応‥そうですね」 伊藤医師は、照らされたCTの画像とカルテを交互に見ると、眼鏡を外し、晋治と京子、そして美奈子へ向き直った。 「画像を見る限り、見える範囲での異常は見当たりません。その他の検査でも、結果は良好ですね…」 3人共、脳神経科医の出した結論にほっとはするも、何かしらん違和感を覚えずには居られないでいる。 「皆さんがご心配ならば、精神科に一度相談されるといいと思います。田中さんの担当医からの依頼だったので、徹底的調べました……おっしゃっている事の原因は、恐らく別の所にあるかと‥‥」 医師は……スクリーンのスイッチを消した。 3人は、困惑した面持ちでカウンセリング室を後にすると、待合室であるラウンジへと向かった。 「美奈子ちゃん…精神科っていうのは、どげん思った?」 「ん…どうなんですかねえ。洋介の場合、頻繁じゃないけんですね…」 「お父さん、私は大丈夫って思うよ‥」 「俺も一回だけあるもんなー。そん時は完全に寝言やったばってん、ちょっと気色悪かったもんな」 「あの時でしょ?」 「お前もおったかいな?」 3人は、丸テーブルに腰を降ろした。 伊藤医師が口にした「精神科」という言葉に3人が3人、ショックを受けたのは当然であるが、何より洋介の独り言の原因は他にある…事故による後遺症ではなかったという事実に、「精神科」に結論を委ねる事の戸惑いを、3人共隠しきれないでいた。 「寝言って……?」 美奈子は首を傾(かし)げた。 「ん……」 京子が晋治に視線を送る。 そして、話し始めた晋治の口調は、少しため息混じりだった。 「美奈子ちゃん……多分寝言やけんね」 「…はい」 「一人二役やった……」
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